情を人に打ち明けたくないのと、同じような関係らしく見えた。
 そこで己は外《ほか》の方角から、エルリングの事を探知しようとした。
 己はその後《ご》中庭や畠《はた》で、エルリングが色々の為事をするのを見た。薪《まき》を割っている事もある。花壇を掘り返している事もある。桜ん坊を摘んでいる事もある。一山もある、濡《ぬ》れた洗濯物を車に積んで干場《ほしば》へ運んで行《ゆ》く事もある。何羽いるか知れない程の鶏《にわとり》の世話をしている事もある。古びた自転車に乗って、郵便局から郵便物を受け取って帰る事もある。
 エルリングの体は筋肉が善く発達している。その幅の広い両肩の上には、哲学者のような頭が乗っている。たっぷりある、半明色の髪に少し白髪《しらが》が交って、波を打って、立派な額を囲んでいる。鼻は立派で、大きくて、しかも優しく、鼻梁《びりょう》が軽く鷲《わし》の嘴《くちばし》のように中隆《なかだか》に曲っている。髭《ひげ》は無い。口は唇が狭く、渋い表情をしているが、それでも冷酷なようには見えない。歯は白く光っている。
 己の鑑定では五十歳位に見える。
 下宿には大きい庭があって、それがすぐに海
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