て一しょにトッジイを飲んで話して行きます。」
「冬になったら、この辺《へん》は早く暗くなるだろうね。」
「三時半位です。」
「早く寝るかね。」
「いいえ。随分長く起きています。」こんな問答をしているうちに、エルリングは時計を見上げた。「御免なさい。丁度夜なかです。わたしはこれから海水浴を遣るのです。」
 己は主人と一しょに立ち上がった。そして出口の方へ行《ゆ》こうとして、ふと壁を見ると、今まで気が附かなかったが、あっさりした額縁に嵌《は》めたものが今一つ懸けてあった。それに荊《いばら》の輪飾《わかざり》がしてある。薄暗いので、念を入れて額縁の中を覗くと、肖像や画《え》ではなくて、手紙か何かのような、書いた物である。己は足を留《と》めて、少し立ち入ったようで悪いかとも思ったが、決心して聞いて見た。
「あれはなんだね。」
「判決文です。」エルリングはこう云って、目を大きく※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]って、落ち着いた気色《けしき》で己を見た。
「誰の。」
「わたくしのです。」
「どう云う文句かね。」
「殺人犯で、懲役五箇年です。」緩やかな、力の這入った詞で、真面目な、憂愁を帯び
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