エ余之罪悪、不遑枚挙《まいきよにいとまあらず》。今王政一新、四海|属目《しよくもく》之時に当りて、如此《かくのごとき》大奸要路に横《よこたは》り、朝典を敗壊し、朝権を毀損《きそん》し、朝土を惑乱し、堂々たる我神州をして犬羊に斉《ひと》しき醜夷の属国たらしめんとす。彼徒《かのと》は之《これ》を寛仮すること能《あた》はず、不得已《やむをえず》斬殺に及びしものなり。其壮烈果敢、桜田の挙にも可比較《ひかくすべし》。是《この》故《ゆゑ》に苟《いやしくも》有義気《ぎきある》者、愉快と称せざるはなし。抑如此《そも/\かくのごとき》事変は、下情の壅塞《ようそく》せるより起る。前には言路洞開を令せらると雖《いへど》も、空名のみにして其|実《じつ》なし。忠誠|※[#「魚+更」、第3水準1−94−42]直《かうちやく》之者は固陋《ころう》なりとして擯斥《ひんせき》せられ、平四郎の如き朝廷を誣罔《ぶまう》する大奸賊|登庸《とうよう》せられ、類を以て集り、政体を頽壊《たいくわい》し、外夷|愈《いよ/\》跋扈《ばつこ》せり。有志之士、不堪杞憂《きいうにたへず》、屡《しば/\》正論|※[#「言+黨」、第4水準2−8
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