W−84]議《たうぎ》すと雖、雲霧|濛々《もう/\》、毫《がう》も採用せられず。乃《すなは》ち断然|奸魁《かんくわい》を斃《たふ》して、朝廷の反省を促す。下情|壅塞《ようそく》せるより起ると云ふは即是也《すなはちこれなり》。切に願ふ、朝廷此情実を諒《りやう》とし給ひ、詔《みことのり》を下して朝野の直言を求め、奸佞《かんねい》を駆逐し、忠正を登庸し、邪説を破り、大体を明《あきらか》にし給はむことを。若夫《もしそれ》斬奸之徒は、其情を嘉《よみ》し、其実を不論《あげつらはず》、其実を推し、其名を不問《とはず》、速《すみやか》に放赦《はうしや》せられよ。果して然らば、啻《たゞ》に国体を維持し、外夷の軽侮を絶つのみならず、天下之士、朝廷改過の速《すみやか》なるに悦服し、斬奸の挙も亦|迹《あと》を絶たむ。然らずんば奸臣|朝《てう》に満ち、乾綱《けんかう》紐《ひも》を解き、内憂外患|交《こも/″\》至り、彼《かの》衰亡の幕府と択《えら》ぶなきに至らむ。於是乎《こゝにおいてか》、憂国之士、奮然|蹶起《けつき》して、奸邪を芟夷《さんい》し、孑遺《げつゐ》なきを期すべし。是れ朝廷の威信を繋《つな》ぐ所以《
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