で、刃《は》が一尺八寸あつた。
搦手《からめて》は一歩先に西裏口《にしうらぐち》に来て、遠山、安立、芹沢、時田が東側に、斎藤と同心二人とが西側に並んで、真《ま》ん中《なか》に道を開《あ》け、逃げ出したら挟撃《はさみうち》にしようと待つてゐた。そのうち余り手間取《てまど》るので、安立、遠山、斎藤の三人が覗《のぞ》きに這入つた。離座敷には人声がしてゐる。又|持場《もちば》に帰つて暫く待つたが、誰も出て来ない。三人が又|覗《のぞ》きに這入ると、雨戸の隙から火焔の中に立つてゐる平八郎の坊主頭が見えた。そこで時田、芹沢と同心二人とを促して、一しよに半棒で雨戸を打ちこはした。併《しか》し火気が熾《さかん》なので、此手のものも這入ることが出来なかつた。
そこへ内山が来て、「もう跡《あと》は火を消せば好いのですから、消防方《せうばうかた》に任せてはいかがでせう」と云つた。
遠山が云つた。「いや。死骸がぢき手近にありますから、どうかしてあれを引き出すことにしませう。」
遠山はかう云つて、傍輩《はうばい》と一しよに死骸のある所へ水を打ち掛けてゐると、消防方《せうばうかた》が段々集つて来て、朝五つ過
前へ
次へ
全125ページ中97ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
森 鴎外 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング