あるが、これは自分が出ることにし、小頭《こがしら》の与力二人には平与力《ひらよりき》蒲生熊次郎《がまふくまじらう》、本多|為助《ためすけ》を当て、同心三十人は自分と同役岡との組から十五人|宛《づゝ》出《だ》すことにした。集合の場所は土橋《どばし》と極めた。京橋組への伝達には、当番与力|脇《わき》勝太郎に書附を持たせて出して遣つた。
手配《てくばり》が済んで、坂本は役宅《やくたく》に帰つた。そして火事装束《くわじしやうぞく》、草鞋掛《わらぢがけ》で、十文目筒《じふもんめづゝ》を持つて土橋《どばし》へ出向いた。蒲生《がまふ》と同心三十人とは揃つてゐた。本多はまだ来てゐない。集合を見に来てゐた畑佐《はたさ》は、跡部《あとべ》に二度催促せられて、京橋口へ廻《まは》つて東町奉行所に往くことにして、先へ帰つたのださうである。坂本は本多がために同心一|人《にん》を留《と》めて置いて、集合地を発した。堀端《ほりばた》を西へ、東町奉行所を指《さ》して進むうちに、跡部からの三度目の使者に行き合つた。本多と残して置いた同心とは途中で追ひ附いた。
坂本が東町奉行所に来て見ると、畑佐はまだ来てゐない。東組与
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