之助の師|藤重《ふぢしげ》の倅《せがれ》良左衛門《りやうざゑもん》、孫|槌太郎《つちたらう》の両人を呼んで、今年の春|堺《さかひ》七|堂《だう》が浜《はま》で格之助に丁打《ちやううち》をさせる相談をした。それから平八郎、格之助の部屋の附近に戸締《とじまり》をして、塾生を使つて火薬を製させる。棒火矢《ぼうひや》、炮碌玉《はうろくだま》を作らせる。職人を入れると、口実を設けて再び外へ出さない。火矢《ひや》の材木を挽《ひ》き切つた天満北木幡町《てんまきたこばたまち》の大工|作兵衛《さくべゑ》などがそれである。かう云ふ製造は昨晩まで続けられてゐた。大筒《おほづゝ》は人から買ひ取つた百目筒《ひやくめづゝ》が一|挺《ちやう》、人から借り入れて返さずにある百目筒が二挺、門人|守口村《もりぐちむら》の百姓兼質商|白井孝右衛門《しらゐかうゑもん》が土蔵の側《そば》の松の木を伐《き》つて作つた木筒《きづゝ》が二挺ある。砲車《はうしや》は石を運ぶ台だと云つて作らせた。要するに此半年ばかりの間に、絃誦洋々《げんしようやう/\》の地が次第に喧噪《けんさう》と雑※[#「しんにゅう+「鰥」のつくり」、第4水準2−8
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