/\》しい陰謀事件が※[#「ごんべん+「墟」のつくり」、第4水準2-88-74、169-4]《うそ》かも知れぬと云ふ想像に伴ふ、一種の安心を感じた。そこで逮捕を見合せた。
 跡部は荻野《をぎの》等の話を聞いてから考へて見て、平山に今一度一大事を聞いた前後の事を精《くは》しく聞いて置けば好かつたと後悔した。をとつひの夜平山が来て、用人《ようにん》野々村次平に取り次いで貰《もら》つて、所謂《いはゆる》一大事の訴《うつたへ》をした時、跡部は急に思案して、突飛《とつぴ》な手段を取つた。尋常なら平山を留《と》め置《お》いて、陰謀を鎮圧する手段を取るべきであるのに、跡部はその決心が出来なかつた。若し平山を留め置いたら、陰謀者が露顕を悟つて、急に事を挙げはすまいかと懼《おそ》れ、さりとて平山を手放して此土地に置くのも心許《こゝろもと》ないと思つたのである。そこで江戸で勘定奉行になつてゐる前任西町奉行矢部|駿河守《するがのかみ》定謙に当てた私信を書いて、平山にそれを持たせて、急に江戸へ立たせたのである。平山はきのふ暁《あけ》七つ時《どき》に、小者《こもの》多助《たすけ》、雇人《やとひにん》弥助《やすけ
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