T線]に渡し給へといひぬ。おん身の上をば、妹の兄の上を語るらんやうに語りぬ。爾時《そのとき》アヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]が唇は血に染まり居たり。死は遽《にはか》に襲ひ至りて、アヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]はわが面をまもりつゝこときれ侍《はべ》りと、語りもあへず、マリア[#「マリア」に傍線]は泣き伏したり。われは詞はあらで、マリア[#「マリア」に傍線]の手を握りつ。
われは寺院に往きてアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]が爲めに祈祷し、又その墓に尋ね詣《まう》でつ。此地の瑩域《えいゐき》は、高き石垣もて水面《みのも》より築き起されたるさま、いにしへのノア[#「ノア」に傍線]が舟の洪水の上に泛《うか》べる如し。草むらの中に黒き十字架あまた立てるあたりに歩み寄れば、わが尋ぬる墓こそあれ。只是一片の石に、アヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]と彫り付けたり。一基の十字架の上に、緑の色の猶|鮮《あざやか》なる月桂《ラウレオ》の環を懸けたるは、ロオザ[#「ロオザ」に傍線]とマリア[#「マリア」に傍線]との手向《たむけ》なるべし。われは墓前に跪《ひざまづ》きて、亡人《な
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