Bこの文認め候は、君に見えてより數時間の後に候へども、君のこれを讀ませ給はんは、數月の後なるべきか、或は又月を踰《こ》えざるべきかとも存ぜられ候。世の人の言に、われとわが姿に出で逢ひしものは、遠からずして死すと申候へば、わが常の心の願にて、我心と同じものになり居たる君に逢ひまゐらせたるは、我死期の近づきたるしるしなるべくやなど思ひつゞけ※[#「まいらせそろ」の草書体文字、144−上−20]。いかなれば我心は君をえ忘れず、いかなれば君は我心と化し給ひて、幸ある時も、禍《わざはひ》に逢へる時も、君は我心を離れ給はざりけん。今より思ひ※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]らし候へば、そは君が世に棄てられたるアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]を棄て給はぬ唯一の恩人にましませばならんと存《ぞんじ》※[#「まいらせそろ」の草書体文字、144−上−26]。されど君の今に至りて猶我身を棄て給はざる御恩は、決して故なき人の上に施し給ひしには候はずと存※[#「まいらせそろ」の草書体文字、144−上−29]。君の此文を見給はん時は、私は世に亡き人なるべければ、今は憚《はゞか》ることなく申上候はん。
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