Aヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]を見つるとき、觀棚《さじき》より舞臺に投げしものなり。さては此一封をマリア[#「マリア」に傍線]に托しきといふはアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]なりしか。死せしはアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]なりしか。
 紙の間には別に重封《かさねふう》の書《ふみ》ありて、アントニオ[#「アントニオ」に傍線]樣へとうは書《がき》せり。遽《あわたゞ》しく裂きて中なる書《ふみ》をとりいだすに、いと長き消息の、前半は墨濃く筆のはこびも慥なれど、後半は震ふ筆もて微《かす》かに覺束なくしるされたるを見る。其文に曰く。
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文《ふみ》して戀しく懷かしきアントニオ[#「アントニオ」に傍線]の君に申上《まうしあげ》※[#「まいらせそろ」の草書体文字、144−上−6]《まゐらせそろ》。今宵はゆくりなくも、おん目に掛り候ひぬ、再びおん目にかゝり候ひぬ。こは久しき程の願にて、又此願のかなはん折をいと恐ろしくおもひしも、久しき程の事にて候。譬へば死をば幸を齎《もたら》すものぞと知りつゝも、死の到來すべき瞬間をば、限なく恐ろしくおもふが如くなるべく候
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