}ドンナ》の恩澤に浴して、我に殊《こと》なる好き運命に逢ひ給ふなるべし。今はわれに唯だ一つの願あり。アントニオ[#「アントニオ」に傍線]よ、能くそを※[#「りっしんべん+(匚<夾)」、第3水準1−84−56]《かな》へ給はんかといふ。われ手に接吻して、いかなるおん望にもあれ、身にかなふ事ならばといふに、アヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]、さらばこよひの事をば夢とおぼし棄て給ひて、いまより後いついづくにて相見んとも、おん身と我とは識らぬ人となりなんこと、是れわが唯だ一つの願ぞ、さらば、アントニオ[#「アントニオ」に傍線]、これより善き世界に生れ出でなば、また相見ることもあらんとて、我手を握りぬ。苦痛の重荷に押し据ゑられたる我は、アヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]が足の下に伏しまろびしに、アヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]徐《しづ》かに扶《たす》け起し、すかして戸外に伴ひ出でぬ。我は小兒の如くすかされて、小兒の如く泣きつゝ、又來んを許し給へ、許し給へと繰返しつ。戸は、さらばといふ最後の一こゑに鎖されて、われは空しく暗黒なる廊《わたどの》の中に立てり。街に出づれば、その暗黒
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