閧モ》、一目の介《おもいれ》もて、萬人に幸福を與へしおん身なるを。アヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]。幸福は妙齡と美貌とに伴ふものにて、才《ざえ》と情との如きは、その顧みるところにあらざるを奈何せん。われ。おん身は病に臥し給ひきとは實《まこと》か。アヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]。病はいと重く、一とせの久しきにわたりしかど、死せしは我容色と我音聲とのみなりき。公衆は此二つの屍を併《あは》せ藏せる我身を棄てたり。醫師《くすし》はこの死を假死なりとなし、我身は果敢《はか》なくもこれを信じたりき。我身は舊に依りて衣食を要するに、平生の蓄《たくはへ》をば病の爲めに用ゐ盡しぬれば、彼死を祕して、詐《いつは》りて猶ほ生きたるものゝ如くし、又脂粉を塗りて場に上ることゝなりぬ。されど流石《さすが》に人を驚《おどろか》さんことの心苦しくて、わざと燈燭の數少き、薄暗き小劇場に出づるにこそ。おん身の記憶に存じたるアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]は早や死して、その遺像は只だかしこの壁にありといひぬ。われは此詞を聞きて、向ひの壁を仰ぎ看しに、一面の大畫幅あり。枠《わく》を飾れる黄金の光の、
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