フ稍※[#二の字点、1−2−22]大なる家ありて、火の光よそよりも明かに、人多く入りゆくさまなり。こはヱネチア[#「ヱネチア」に二重傍線]の數多き小芝居の一にして、座の名をば聖《サン》ルカス[#「ルカス」に傍線]と云へりとぞ。大抵|樂劇《オペラ》の一組ありて、日ごとに二曲を興行すること、拿破里の「フエニチエ」座に同じ。初の一曲は午後四時に始まり六時頃には早く終り、次なる曲は夕の八時より始まる。素《もと》より精《くは》しき技藝、高き趣味をこゝに求むべきにはあらねど、些の音樂に耳を悦ばしめんとする下層の市民の願をばこれによりて遂げしむることを得べく、又旅人などの消遣《せうけん》の爲めに來り觀るも少からざるべし。觀棚《さじき》の料《しろ》は甚だ廉《やす》く晝夜とも空席を留めぬを例とす。
招牌《かんばん》を仰げば、「ドンナ、カリテア、レジナ、ヂ、スパニア」(西班牙《スパニア》女王カリテア[#「カリテア」に傍線]夫人)と大書し、作譜者の名をばメルカダンテ[#「メルカダンテ」に傍線]と注せり。われ心の中におもふやう。かゝる時にこそ、我脈絡にカムパニア[#「カムパニア」に二重傍線]の野なる山羊の乳
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