艪ノ代りて、若し疑はしとおもひ給はゞ、夥伴《なかま》に入り給はでもあるべきにと答へぬ。人々はこれを聞きて打笑ひ、只管《ひたすら》我が演じいだす所のいかなるべきを俟《ま》ち居たり。
われは將《まさ》に口を開かんとするに臨みて、神の我に光明を與へ給ふを覺えたり。先づヱネチア[#「ヱネチア」に二重傍線]の配偶なる、威力ある海を敍し、それより海の兒孫なる航海者に及び、性命を一|葦《ゐ》に托する漁者に及べり。次に前夕《さいつゆふべ》の目撃せしところに就きて颶風を敍し、岸に臨みて翹望《げうばう》せる婦幼に及び、十字架を落す兒童とこれを拾ひて高く※[#「敬/手」、第3水準1−84−92]《さゝ》ぐる漁翁とに及べり。我は殆ど歌ふところのものゝ即ち神の御聲《みこゑ》にして、我身の唯だ此聲を發する器具に過ぎざるを覺えき。時に廣座の間|寂《せき》として人なきが如く、處々に巾《きれ》もて涙を拭ふものあるを見る。われはこれより茅屋《ばうをく》のうちなる寡婦孤兒の憐むべき生活《なりはひ》を敍し、賑恤《しんじゆつ》の必要と其效果とに及べり。われは人間の快さは取るに在らずして與ふるに在り、與ふる快さは即ち神の御心に
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