閨A此席にありとさゝやきしが、會※[#二の字点、1−2−22]《たま/\》婦人數人と老いたる貴族|某《それ》との坐客を代表して、我に再演を請ひたりしが爲めに、われは友と多く語を交ふること能はざりき。此請は我が預め期したるところなりき。われは好機會を得て、昨夜《よべ》の暴風と難船との事を敍し、前に友の雄辯もて遂ぐること能はざりしところをも、詞章もて遂げんと期《ご》したりしなり。
 我はチチアノ[#「チチアノ」に傍線]の贊といふ題を得たり。即興はおもふまゝなる喝采を博して、古名匠の贊はわが自贊となりぬ。されどチチアノ[#「チチアノ」に傍線]は海を畫く人ならざりしが爲めに、われは此題を利用して我志を果すに由なかりき。
 主婦は我に近づきていふやう。君の如く自家の技藝もてかくあまたの人を樂ましめ感ぜしめんは、いかに快き事なるべきか。われ。詩人第一の快事は詩の成功なり。主婦。さらば能くその快きを題として歌ひ給はんや。君の辭を措《お》き給ふことの容易《たやす》げなるよりわれ等は、頻《しき》りに請ふことの無禮《なめ》げなるをさへ忘れんとす。われ。こゝに一の奇術あり。そは人々皆詩人となりて、能く詩人の
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