烽フなし。暗黒なる橄欖《オリワ》の林はいよ/\濃き陰翳を我心の上に加へ、四邊《よも》の山々は來りて我|頭《かしら》を壓せんとす。われは飛ぶが如くに、里といふ里を走り過ぎて、早く海に到らんことを願へり、風吹く海に、下なる天《そら》の我を載すること上なる天の我を覆ふが如くなる處に。
我胸は愛を求むるが爲めに燃ゆ。是より先き此火は既に二たび點ぜられしなり。昔のアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]は我が仰ぎ瞻《み》しところ、我が新に醒めたる心の力もて攀《よ》ぢんと欲せしところなるに、憾《うら》むらくは我を棄てゝ人に往けり。今のフラミニア[#「フラミニア」に傍線]は我を眩《げん》せしめず、我を狂せしめずして、漸く我心と膠着《かうちやく》すること、寶石のまばゆからざる光の、久しきを經て貴きことを覺えしむるが如くなりき。フラミニア[#「フラミニア」に傍線]は我手を握ること、妹の兄の手を握る如く、我にこれに接吻することを許すこと、妹の兄に許す如く、又我を説き慰め、我が爲めに祈りて世の穢《けがれ》を受けざらしめんとして、その度ごとに知らず識らず鏃《やじり》を我心に沒せしめたり。我はこれを愛すること
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