Sに恥ぢながら、去年は唯だ二たび訪ひしのみなれど、彼方より尋ね來たるごとに、些《ちと》の小づかひ錢をば分ち與ふるを例とすと答へぬ。
 われは姫に促されて、我自傳を語りつゞけ、ベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]の上に及び、又アヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]の上に及びぬ。されど我面に注ぎたる姫の涼しき目は、我をして縱《ほしいまゝ》に戀愛を説き嫉妬を説くこと能はざらしめき。われは話題を轉じてナポリ[#「ナポリ」に二重傍線]の紀行に入り、ララ[#「ララ」に傍線]の事を語り、こたびは又サンタ[#「サンタ」に傍線]の事にさへ及びぬ。
 最も姫の心に※[#「りっしんべん+(匚<夾)」、第3水準1−84−56]《かな》ひしはララ[#「ララ」に傍線]なり。姫の宜給ふやう。アヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]は美しくもありしなるべく、賢《さか》しくもありしなるべし。されど面を公衆の前に曝《さら》すことを憚《はゞか》らず、浮薄なる貴公子を戀ひ慕へるなど、われはいかなる詞もて評すべきを知らぬながら、その人のおん身の妻とならざりしをば喜ぶなり。ララ[#「ララ」に傍線]はこれに異《こと》にて、ま
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