フ軒輊《けんち》するところもなき如し。こは此|御館《みたち》に來てより、始ての※[#「疑のへん+欠」、第3水準1−86−31]待《もてなし》ともいひつべし。
 人々は打解けてくさ/″\の物語などし、姫は笑ひ[#「笑ひ」は底本では「答ひ」]給ふ。われは覺えず興に乘じて、その頃羅馬に行はれたりし一口話を語りぬ。姫はこれをも可笑《をか》しとて笑ひ給ふに、外の人々は遽《には》かに色を正して、中にもかゝる味なき事を可笑しとするは何故ならんなどいふ人さへあり。われ。しか宣給《のたま》へど、今語りしは近頃流行の一口話にて、都人士のをかしとするところなるを奈何《いかに》せん。夫人。否、おん身の話は掛詞《かけことば》の類のいと卑しきをさげとせり。人の腦髓のかくまで淺はかなる事を弄ぶことを嫌はざるは、げに怪しき限ならずや。嗚呼、我とても爭《いか》でかことさらに此の如き事のために、我腦髓を役せんや。我は唯だ世の人の多く語るところにして、我が爲めにもをかしとおもはるゝものなるからに、人々の一粲《いつさん》を博する料《しろ》にもとおもひし迄なり。
 日暮れて客あり。數人の外國人《とつくにびと》さへ雜りたり。われ
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