ネるあり。その頂は天を摩し、所々僅に一石塊を容《い》るべき罅隙《かげき》を存じて、蘆薈《ろくわい》若くは紫羅欄《あらせいとう》これに生じたり。青き焔の如き波に洗はれたる低き岩根には、紅殼《べにがら》の毛星族《まうせいぞく》(クリノイデア)いと繁《しげ》く着きたるが、その紅の色は水を被《かぶ》りて愈※[#二の字点、1−2−22]紅に、岩石の波に觸れて血を流せるかと疑はる。
既にして我等は海を右にし島を左にする處に至りぬ。水を呑吐する大小の窟《いはや》許多《あまた》ありて、中には波の返す毎に僅かに其天井を露《あらは》すあり。こは彼妙音の女怪のすみかにして、草木繁茂せるカプリ[#「カプリ」に二重傍線]の島は唯だこれを蓋《おほ》へる屋上《やね》たるに過ぎざるにやあらん。
漕手の一人なる白髮の翁のいふやう。這裏《このうち》には惡しきもの住めり。人若し過《あやま》ちて此門に入るときは、多くは再びこれを出づることを得ず。その或は又出づるものは、痴なるが如く狂せるが如く、復《ま》た尋常人間の事を解せずといふ。往手《ゆくて》のかたに稍※[#二の字点、1−2−22]大なる一窟あり。されど若し舟に棹《さ
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