k柚《オレンジ》橄欖《オリワ》の林とは交る/″\これを覆へり。岸に沿へる處には、數軒の蜑戸《たんこ》と一棟《むね》の哨舍《ばんごや》とを見る。稍※[#二の字点、1−2−22]《やゝ》高き林木の間に、屋瓦の叢《そう》を成せるはアンナア、カプリイ[#「アンナア、カプリイ」に二重傍線]の小都會なり。一橋一門ありてこれに通ず。一行は棕櫚《しゆろ》の木立てるパガアニイ[#「パガアニイ」に二重傍線]が酒店の前に歩を留めつ。
 我等はこゝに朝餐《あさげ》して、公子夫婦は午時《ひるどき》まで休憩し、それより驢《うさぎうま》を倩《やと》ひてチベリウス[#「チベリウス」に傍線]帝の別墅《べつしよ》の址《あと》を訪はんとす。われは憩はんこゝろなければ、ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]と共に此島を一周し、南に突き出でたる大石門をも見ばやとて、漕手二人を呼び、岸なる舟に乘り遷《うつ》りぬ。
 風少し起りたれば、我等は行程の半ばばかり帆の力に頼ることを得べし。巖壁に近き處には、漁人の網を張りたるあれば、舟はこれを避けて沖の方に進みぬ。既にして奇景の人目を驚すに足るものあるを見る。灰色なる巨石の直立すること千丈
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