ヘ我心にもあるかな。少女が胸中の苦を永言《えいげん》して、これをして深く生涯の不幸を感ぜしめ、終にはその額に接吻して驚かしたるは何事ぞや。そが上にかの接吻は我が婦女に與へたる第一の接吻なり。少女の貧しきを侮《あなど》り、その目しひたるを奇貨として、我は我が未だ嘗て敢てせざりしところのものを敢てしたり。我はベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]を輕佻《けいてう》なりとせり。而《しか》るに我が爲すところも亦此の如し。現《げ》に塵の世に生れたる人、誰か罪業なきことを得ん。いかなれば我は自ら待つことの寛《ゆる》くして、人を責むることの酷なりしぞ。われ若し再び瞽女《ごぜ》に逢はば唯だ地上に跪いてこれに謝せん。
 一行は車に上りてサレルノ[#「サレルノ」に二重傍線]に歸らんとす。我は心に今一度瞽女を見んことを願ひしが、人に問ふことを憚りたり。忽ちジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]の案内者を顧みて、さるにても彼の目しひたる娘はいかにしたると問ふを聞く。案内者の一人答へてララ[#「ララ」に傍線]が事にて候ふや、海神《ポセイドン》祠《し》のほとりにやあるらん、常に彼處にあることを好めばといふ。ジエン
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