倹F《かちいろ》の布は垢つきよごれ、長き黒髮をば項《うなじ》に束ね、美しき目よりは恐ろしき光を放てり。
 此群に十二歳を踰《こ》えじと見ゆる、すぐれて麗《うるは》しき娘あり。アヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]となるべき姿にもあらず、さればとて又サンタ[#「サンタ」に傍線]となるべき貌にもあらず。前にアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]が物語に聞きつる、メヂチ[#「メヂチ」に傍線]家の愛憐[#「愛憐」は底本では「受憐」]神女の像は、かゝる面影あるにはあらずやと思はる。實に此|少女《をとめ》の清き容《かたち》は、人をして囘抱せんと欲せしむるものにあらで、却りて膜拜《もはい》せんと欲せしむるものなり。
 この少女は少し群を離れて立てり。褐《かち》色なる方巾《はうきん》偏肩《へんけん》より垂れたるが、巾《きれ》を纏《まと》はざる方《かた》の胸と臂《ひぢ》とは悉く現はれたり。雙脚には何物をも着けざりき。かくはかなき身と生れても、流石《さすが》に粧《よそほ》ひ飾る心をば持ちたるにや、髮平かに結ひ上げて、一束の菫花《すみれ》を※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13
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