轤ネ》れり。平地には菫花《すみれ》多く、薊《あざみ》その外の雜草の間に咲きひろごりたり。自然の力|餘《あまり》ありて人間の工《たくみ》を加へざる處なれば、草といふ草、木といふ木、おのがじし生ひ榮ゆるが中に、蘆薈、無花果《いちじゆく》、色紅なる「ピユレトルム、インヂクム」などの枝葉《えだは》さしかはしたる、殊に目ざましくぞ覺えられし。
 シチリア[#「シチリア」に二重傍線]の自然、その豐饒《ほうねう》の一面と荒蕪の一面とはこゝにあり。シチリア[#「シチリア」に二重傍線]の希臘古祠はこゝにあり。而してシチリア[#「シチリア」に二重傍線]の貧窶《ひんく》もまたこゝにあり。一行のめぐりには一群の乞丐《かたゐ》來り集ひたり。その状《さま》南海諸島の蕃人にも似たるべし。男子は長き羊の皮を、毛を表にして身に纏へり。暗褐色なる雙脚には靴を穿かず、剪《き》らざる髮は黒き面の邊に翻《ひるがへ》り垂れたり。妬《ねた》ましき迄に直《すぐ》に美しく生ひ立ちたる娘たちのこれに隨へるを見るに、そのさま半ば赤はだかなりといふべし。膝の上まで截《き》り開きたる短衣は裂け綻《ほころ》び、鬆《ゆる》く肩に纏へる外套めきたる
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