フ人物はその詩中に活動して、滿場の客はこれが爲めに魅せらるゝ如くなりき。何等の情ぞ。何等の空想ぞ。題にはタツソオ[#「タツソオ」に傍線]あり、サツフオオ[#「サツフオオ」に傍線]あり、地下窟ありき。篇々皆書卷に印して、不朽に垂《た》るとも可なるやう思ひ候ひぬ。夫人。そは珍らしき才ある人なるべし。きのふ往きて聽かざりしこそ口惜しけれ。ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]。(我方を見て)夫人は其詩人の今宵の客なるをば、まだ知らでやおはせし。夫人。さてはアントニオ[#「アントニオ」に傍線]なりとか。舞臺にまで上りて、即興詩を歌ひしとか。ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]。然《さ》なり。その歌は舞臺の上にも珍らしき出來なりき。されど夫人は舊《ふる》く相識り給ふことなれば、定めて屡※[#二の字点、1−2−22]その技倆を試み給ひしならん。夫人。(ほゝ笑みつゝ)まことに屡※[#二の字点、1−2−22]聞きたり。まだ童《わらべ》なりし頃より、アントニオ[#「アントニオ」に傍線]が技倆をば讚め居りしなり。公子。その時われは早く桂の冠をさへ戴かせたり。夫人は處女なりしとき其即興詩の題となりぬ。されど今
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