汲ミぬ、おん身も嬉しと思ひ給ふならん、千萬人の心は渾《すべ》て君に奪はれたり、君は初め我がいかに君のために胸を跳らせ、後君の成功の期《ご》するところに倍するに及びて、いかに君のために安心の息《いき》を※[#「口+(虍/乎)」、95−中段−6]《つ》きたるかを知り給ふまじとは、夫人が我を迎ふる詞なりき。われはその病を問ひしに、否、はや※[#「やまいだれ+差」、第4水準2−81−66]《い》えんとす、君も生れ更り給へる如し、舞臺に立ち給ひしとき、君の姿は美しかりき、極めて美しかりき、興會に乘じて歌ひ給ふに及びては、この世の人とは覺えざりき、又その歌ひ給ふところは皆君が上なるやうに聞き做《な》されたり、地下の窟《いはや》に迷ひ入りし少年と畫工とは、君とフエデリゴ[#「フエデリゴ」に傍線]の君とに外ならず思はれたりといふ。われ。いかにもそは宣《のたま》ふところの如し。我が歌ひしは皆我閲歴なりしなり。夫人。しかなるべし。君は戀の喜をも知り給へり、戀の悲をも知り給へり。君は樂を享《う》くべき福《さいはひ》ある人なり。今よりその福を消受し給はんことをこそ祈れといふ。われ隨即《やがて》きのふより心爽か
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