ホ《こしかけ》あり。是れポムペイ[#「ポムペイ」に二重傍線]の士女の郊外に往反《ゆきかへり》するときしばらく憩ひし處なるべし。想ふに當時この榻《こしかけ》に坐するものは、碑碣のあなたなる林木郊野を見、往來織るが如き街道を見、又波靜なる入江を見つるならん、今は唯だ窓※[#「片+(扈の邑に代えて甫)」、第3水準1−87−69]《さういう》ある石屋《せきおく》の處々に立てるを望むのみ。屋《いへ》は地震の初に受けたりと覺しき許多《あまた》の創痕を留めて、その形|枯髑髏《されかうべ》の如く、窓は空しき眼※[#「穴/巣」、第4水準2−83−21]《がんさう》かと疑はる。間※[#二の字点、1−2−22]當時|普請《ふしん》の半ばなりし家ありて、彫りさしたる大理石塊、素燒の模型などその傍《かたはら》に横れり。
われ等は漸くにして市の外垣に到りぬ。これに登るに幅廣き石級あり。古劇場の觀棚《さじき》の如し。當面には細長き一條の町ありて通ず。熔巖の板を敷けること拿破里の街衢《がいく》と異なることなし。蓋《けだ》しこの板は遠く彼基督紀元七十九年の前にありて噴火せし時の遺物なるべし。今その面を見るに、深く車轍
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