ェりたり。此時人の足音して一間《ひとま》の扉は外より開かれ、主人はフエデリゴ[#「フエデリゴ」に傍線]と共に入り來りぬ。サンタ[#「サンタ」に傍線]夫人は徐《しづか》に友を顧みて、好き處に來給ひたり、アントニオ[#「アントニオ」に傍線]君は熱を患《うれ》へ給ふにやあらん、心地惡しとのたまひつゝ、忽ち青くなり又赤くなり給ふ故、安き心はあらざりきなど云ひ、又我に向ひて、いかに、今は前《さき》の如くにはあらざるならんと云ふ。その面持《おもゝち》すこしも常に殊ならず。われは心の底に、言ふべからざる羞《はぢ》と憤《いきどほり》とを覺えて、口に一語をも出すこと能はざりき。博士は例の古語を引きて、客人《まらうど》心地はいかなるにか、クピド[#「クピド」に傍線](愛の神)の磨く箭《や》にや中《あた》り給ひしなどいひつゝ、われ等に酒を勸めたり。夫人はわれと杯を打※[#「石+並」、第3水準1−89−8]《うちあは》せて、意味ありげなる目を我面に注ぎ、これを乾《ほ》さばや、好《よき》機會《をり》のためにと云ふに、我友|點頭《うなづ》きてげに好機會は必ず來べきものぞ、屈せずして待つが丈夫《ますらを》の事なりと
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