たひ》は兎《と》まれ、角《かく》まれ、その君が心に充※[#「牛+刃」、第4水準2−80−18]したるもの、今や無慙《むざん》にも引き放ちて棄てられ、その跡は空虚になりぬ。この空虚は何物もて填《うづ》むべきか。君は昔こそ書《ふみ》を讀み空想に耽りて自ら足れりとし給ひけめ、彼女優の一たび君を現實世界に引き出したる上は、君も亦我等と同じく血あり肉ある人となり給ひて、その血その肉はその本來の權利を求めでは止まざるべし。少壯幾時かある。男兒何の敢てすべからざる事かあらん。されば我に物隱さんとし給ふには及ばざるにあらずや。われ。おん説の前半は、げにさもあるべく思はれて、空虚の事などは首肯しても好し。されどそを填めん策をば未だ講ぜしことあらず。夫人。さらば君は猶我説を問はんとし給ふか。君の既に一たび空想を出でながら、猶再びこれに還りて、一個の空想人物とならんとし給ふが怪しきなり。アヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]は君が理想の女ならずや。高尚なる人物ならずや。それすら空想人物のアントニオ[#「アントニオ」に傍線]の君を棄てゝ、人柄下りたるベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]を取りしなり。ア
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