「と少かりき。されどサンタ[#「サンタ」に傍線]が性《さが》の拿破里婦人の特色と覺しく、語《ことば》を出すに輕快にして直截《ちよくせつ》なる、人に接するに自然らしく情ありげなるは、深く我心に銘せり。その夫は博學の人と見えたり。共に聚珍館に遊ばんには、これに増す人あるべからず。
われは次第に足近く彼家に出入するやうになりぬ。サンタ[#「サンタ」に傍線]の待遇は漸く厚く親くなりて、われは早くも心の底を打明けて此婦人に語りぬ。後に思へば、われは世馴れぬ節多く、男女《なんによ》の間の事などに昧《くら》きは、赤子に異ならぬ程なれば、サンタ[#「サンタ」に傍線]の如き女に近づくことの、多少の危險あるべきを知るに由なかりしなり。サンタ[#「サンタ」に傍線]が夫は卑しき饒舌家《ぜうぜつか》ならずして、まことに學殖ある人なりしこと、此|往來《ゆきき》の間に明になりぬ。
或日われはサンタ[#「サンタ」に傍線]に語るに、アヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]と別れし時の事を以てせり。サンタ[#「サンタ」に傍線]は我を慰めて、ベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]の心ざまを難じ、又アヌンチヤタ[#「ア
前へ
次へ
全674ページ中350ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
森 鴎外 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング