フなくして地に墮《おと》すことなきなり。わが久しき間の經歴は我前に現じて一瞬時の事蹟に同じく、神の扶掖嚮導《ふえききやうだう》の絲は分明《ぶんみやう》に辨識せられたり。われは敢て自家を以て否運の兒となさじ。神の禍《わざはひ》を轉じて福《さいはひ》となし給へる迹《あと》は掩《おほ》ふ可からざるものあればなり。初めわれ不測の禍のために母上を喪《うしな》ひまゐらせき。されど故《わざ》とならぬ其罪を贖《あがな》はんとてこそ、車上の貴人《あてびと》は我に字を識り書を讀むことを教へしめ給ひしなれ。マリウチア[#「マリウチア」に傍線]とペツポ[#「ペツポ」に傍線]とのわが身を爭ひて、わが全く寄邊《よるべ》なき身の上となりしは、寔《まこと》に限なき不幸なりき。されど斯くてわれカムパニア[#「カムパニア」に二重傍線]の曠野《あらの》に日を送ることなくば、かゝる貴人の爭《いか》でか我を認め得給はん。此の如く因果の鐺《くさり》を手繰《たぐ》りもて行くに、われは神の最大の矜恤、最大の愛憐を消受せしこと疑ふべからず。唯だ凡慮に測り知られぬは我とアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]との上なり。ベルナルドオ[#
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