ト土なり。かへす/″\も嬉しきは再び斯《この》土に來しことぞと云ふ。友はわれと同じく枝なる果に接吻し、又目に喜の涙を浮べて、我|項《うなじ》を抱き我額に接吻せり。
 火は火を呼び、情は情を呼ぶ。われは最早此舊相識に對して、胸臆を開き緘※[#「口+黒」、第4水準2−4−36]《かんもく》を破ることを禁じ得ざりき。われは我が羅馬に在りての遭遇を語りて、高くアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]の名を唱へたり。人を傷けて亡命せしこと、身を賊寨《ぞくさい》に托せしことより、怪しき媼《おうな》の我を救ひしことまで、一も忌み避くることなかりき。友の手は牢《かた》く我手を握りて、友の眼光《まなざし》は深く我眼底を照せり。
 忽ち啜泣《すゝりなき》の聲の背後《うしろ》に起るあり。背後はキケロ[#「キケロ」に傍線]の温泉《いでゆ》の入口にて、月桂《ラウレオ》朱欒《ザボン》の枝繁りあひたれば、われは始より人あるべしとは思ひ掛けざりしなり。枝推し分けて見れば、彼温泉の入口なる石に踞して泣く女あり。そは前《さき》の拿破里の夫人なりき。
 夫人は涙の顏を擧げて我に謝して云ふやう。我が無禮《なめ》なるを恕《ゆる
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