B途上一微物に遭ふごとに、友はその詩趣を發揮して我心を慰めたり。この憂き旅の道づれには、フエデリゴ[#「フエデリゴ」に傍線]こそげに願ひても無かるべき人物なりしなれ。
 友は往手《ゆくて》を指ざしていふやう。かしこなるが我が懷かしき穢《きたな》きイトリ[#「イトリ」に二重傍線]の小都會なり。汝は故里の我が居る町をいかなる處とかおもへる。街衢《がいく》の地割の井然《せいぜん》たるは、幾何學の圖を披《ひら》きたる如く、軒は同じく出で、梯《はしご》は同じく高く、家々の並びたるさまは、檢閲のために列をなしたる兵卒に殊ならず。清潔なることはいかにも清潔なり。されどかくては復た何の趣をかなさん。イトリ[#「イトリ」に二重傍線]に入りて灰色に汚れたる家々の壁を仰ぎ見よ。その窓には太《はなは》だ高きあり、太だ低きあり、大なるあり、小なるあり。家によりては異樣に高き梯の巓《いたゞき》に門口を開けるあり。その内を望めば、※[#「糸+樔のつくり」、第4水準2−84−55]車《いとぐるま》の前に坐せる老女あり。側なる石垣の上よりは黄に熟したる木の實の重げに生《な》りたる枝さし出でたるべし。この參差《しんし》錯
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