ォ蘆葦《あし》、葉|闊《ひろ》き睡蓮《ひつじぐさ》(ニユムフエア)を長ず。羅馬の方より行けば左に山岳の空に聳《そび》ゆるあり。その半腹なる村落の白壁は、鼠いろなる岩石の間に亂點して、城郭かとあやまたる。左は海に向へる青野のあなたに、チルチエオ[#「チルチエオ」に二重傍線]の岬《みさき》(プロモントリオ、チルチエオ)の隆《たか》く起れるあり。こは今こそ陸つゞきになりたれ、古のキルケ[#「キルケ」に傍線]が島にして、オヂツセウス[#「オヂツセウス」に傍線]が舟の着きしはこゝなり。(ホメロス[#「ホメロス」に傍線]の詩に徴するに、トロヤ[#「トロヤ」に二重傍線]の戰果てゝ後、希臘《ギリシア》イタカ[#「イタカ」に二重傍線]王オヂツセウス[#「オヂツセウス」に傍線]この島に漂流せしに、妖婦キルケ[#「キルケ」に傍線]舟中の一行を變じて豕《ゐのこ》となす、オヂツセウス[#「オヂツセウス」に傍線]神傳の藥草にて其妖術を破りぬといふ。)
 霧は歩むに從ひて散ぜり。晒《さら》せる布の如き溝渠《こうきよ》、緑なる氈《かも》の如き草原の上なる薄ぎぬは、次第に※[#「寨」の「木」に代えて「衣」、第3水準1−
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