《イギリス》の老婦人ありて、年若き男女と共に、拿破里《ナポリ》へ往かんと、此山の麓を過ぎぬ。我等は此一群を馬車より拉《ひ》き卸《おろ》したり。我等は三人を擒《とりこ》にして、財物を掠《かす》め取りつ。少女《をとめ》は若き男の許嫁《いひなづけ》の婦《よめ》なりしならん。顏ばせつやゝかに、目なざし涼しかりき。男をば木に括《くゝ》りたり。女は猶處子なりき。われはサヱルリ[#「サヱルリ」に傍線]侯に扮することを得たり。賠《つぐの》ひの金屆きて一群の山を下りし時、少女の顏は色|褪《あ》せて、目は光鈍りたりき。深山は蔭多きけにやあらん。
この物語にわれは覺えず面をそむけしかば、若者は分疏《いひわけ》らしく詞を添へて、されど新教の女なりき、惡魔の子なりきとつぶやきぬ。われ等二人はしばし語なくして相|對《むか》へり。若者は今一つ讀み給へと乞ひぬ。われは喜びて又尊き書を開きつ。
封傳
夕ぐれにフルヰア[#「フルヰア」に傍線]の媼歸りて、われに一裹《ひとつゝみ》の文書《もんじよ》を遞與《わた》して云ふやう。山々は濕衾《ぬれぶすま》を被《かつ》きたるぞ。巣立するには、好き折なり。往方《ゆくて
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