モ。我を伴ひ來し男の云はく。われおもふに、君は男の身を錯《あやま》り射給ひしのみにあらず、女の心をも亦錯り射給ひしなり。雌雄《めを》は今|雙《なら》び飛ぶべし。君は唯だこゝに在《いま》せ。自由なる快活なる生計《たつき》なり。君は小なる王者たることを得べし。而してその危さは決して世間の王位より甚しからず。酒は酌めども盡きざるべし。女は君を欺《あざむ》きし一人の代りに、幾人をも寵し給へ。同じく是れ生活なり、餘瀝《よれき》を嘗むると、滿椀を引くと、唯だ君が選み給ふに任すと云ひき。
 ベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]は死せず。我は人を殺さず。この信は我がために起死の藥に※[#「にんべん+牟」、第3水準1−14−22]《ひと》しかりき。獨りアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]を失ひつる憂に至りては、終に排するに由なきなり。われは猶豫することなく答へき。我身は只君等の處置するに任すべし。されどわが嘗て受けし教と、現《げん》に懷《いだ》ける見《けん》とは、俘囚《とりこ》たるにあらずして、君等が間に伍すべきやうなし。これを聞きて、我を伴ひ來し男の顏は、忽ち嚴《おごそか》なる色を見せたり。盾
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