驍ス》を弄《もてあそ》べり。火光の照し出せる面《おも》ざしは、苦《にが》みばしりて落ち着きたるさまなり。人々は生面の客あるを見ても、絶て怪み訝《いぶか》ることなく、我に榻《こしかけ》を與へて坐せしめ、我に盞《さかづき》を與へて飮ましめ、肴《さかな》せんとて鹽肉團《サラメ》をさへ截《き》りてくれたり。その相語るを聞くに、方言にて解すべからず、されど我上に關《かゝ》はらざる如くなりき。
我は飢を覺えずして、たゞ燃ゆる如き渇を覺えしかば、酒を飮みつゝ四邊《あたり》を見たり。隅々には脱ぎ棄てたる衣服と解き卸したる兵器とあるのみ。一角に龕《がん》の如く窪みたる處あり。その天井には半ば皮剥ぎたる兎二つ弔《つ》り下げたり。初め心付かざりしが、その窪みたる處には一人の坐せるあり。年老いたる媼《おうな》の身うち痩せ細りたるが、却りて脊直《せすぐ》にすくやかげなる坐りざまして、あたりに心留めざる如く、手はゆるやかに絲車を※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]せり。銀の如き髮の解けたるが、片頬に墜《お》ちかゝりて、褐色なる頸のめぐりに垂るゝを見る。その墨の如き瞳は、とこしへに苧環《をだまき》の上に凝注
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