四畳半があるのである。
いつも夜なかに小用に行く女中は、竹のさらさらと摩《す》れ合う音をこわがったり、花崗石《みかげいし》の石燈籠を、白い着物を着た人がしゃがんでいるように見えると云ってこわがったりする。或る時又用を足している間じゅう、四畳半の中で、女の泣いている声がしたので、帰りに障子を開けて見たが、人はいなかったと云ったものがある。これは友達をこわがらせる為めに、造り事を言ったのであるが、その話を聞いてからは、便所の往《ゆ》き返りに、とかく四畳半が気になってならないのである。殊に可笑しいのは、その造り事を言った当人が、それを言ってからは四畳半がこわくなって、とうとう一度は四畳半の中で、本当に泣声がしたように思って、便所の帰りに大声を出して人を呼んだことがあったのである。
* * *
お金は二人が小用に立った跡で、今まで気の附かなかった事に気が附いた。それはお花の空床《あきどこ》の隣が矢張空床になっていることであった。二つ並んで明いているので、目立ったのである。
そして、「ああお蝶さんがまだ寝ていないが、どうしたのだろう」と思った。お花の隣の空床
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