なった奴《やつ》は、献身者だというので、ひどく崇《あが》められているというじゃないか」と云った。
木村は「Ravachol《ラワコオル》―Vaillant《ワイヤン》―Henry《アンリイ》―Caserio《カゼリオ》」と数を読むように云って、「随分盛んに主義の宣伝に使われているようですね」と言い足した。
「どれ」と云って、犬塚が紙巻の燃えさしを灰吹の中に投げたのを合図に、三人は席を起った。
外《ほか》を片付けてしまって待っていた、まかないの男が、三人の前にあった茶碗や灰吹を除《の》けて、水をだぶだぶ含ませた雑巾《ぞうきん》で、卓《たく》の上を撫《な》で始めた。
[#地から1字上げ](明治四十三年十二月)
底本:「普請中 青年 森鴎外全集2」ちくま文庫、筑摩書房
1995(平成7)年7月24日第1刷発行
底本の親本:「筑摩全集類聚版森鴎外全集」筑摩書房
1971(昭和46)年4月〜9月刊
入力:鈴木修一
校正:mayu
2001年7月31日公開
2006年4月30日修正
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