上に積もっていて、硝子というものの透き徹《とお》る性質を全く失っているのだから、紙を張る必要はない。それに紙が張ってあるのは、おおかた硝子を張った当座、まだ透き徹って見えた頃に発明の才のある役人がさせた事だろう。
 この広間に白木の長い卓と長い腰掛とが、小道具として据え附けてある。これは不断片附けてある時は、腰掛が卓の上に、脚を空様《そらざま》にして載せられているのだが、丁度弁当を使う時刻なので、取り卸されている。それが食事の跡でざっと拭《ふ》くだけなので、床と同じ薄墨色になっている。
 一体役所というものは、随分議会で経費をやかましく言われるが、存外質素に出来ていて、貧乏らしいものである。
 号砲に続いて、がらんがらんと銅の鐸《たく》を振るを合図に、役人が待ち兼ねた様に、一度に出て来て並ぶ。中にはまかないの飯を食うのもあるが、半数以上は内から弁当を持って来る。洋服の人も、袴《はかま》を穿《は》いた人も、片手に弁当箱を提げて出て来る。あらゆる大さ、あらゆる形の弁当が、あらゆる色の風炉鋪《ふろしき》に包んで持ち出される。
 ずらっと並んだ処を見渡すと、どれもどれも好く選んで揃《そろ》えた
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