うなものが出来ても、それはきっと似て非なるもので、その純潔は汚涜《おとく》の繰延《くりのべ》に過ぎないだろう。所詮そうそう先の先までは分かるものではない。とにかくアヴァンチュウルに遭遇して見てからの事である。まあ、こんな風な思量が、半ば意識の閾《しきい》の下に、半ばその閾を踰《こ》えて、心の中に往来していたことがある。そういう時には、己はそれに気が付いて、意識が目をはっきり醒《さ》ますと同時に、己はひどく自ら恥じた。己はなんという怯懦な人間だろう。なぜ真の生活を求めようとしないか。なぜ猛烈な恋愛を求めようとしないか。己はいくじなしだと自ら恥じた。
 しかしとにかく内面からの衝動はあった。そして外面からの誘惑もないことはなかった。己は小さい時から人に可哀《かわゆ》がられた。好《い》い子という詞が己の別名のように唱えられた。友達と遊んでいると、年長者、殊に女性の年長者が友達の侮辱を基礎にして、その上に己の名誉の肖像を立ててくれた。好い子たる自覚は知らず識《し》らずの間に、己の影を顧みて自ら喜ぶ情を養成した。己のvanite[#最後の「e」は「´」付き]《ヴァニテエ》を養成した。それから己は
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