学の教師に、山村というお爺いさんがいて、それがSpiritisme《スピリチスム》に関する、妙な迷信を持っていた。その教師が云うには、人は誰でも体の周囲《まわり》に特殊な雰囲気を有している。それを五官を以てせずして感ずるので、道を背後《うしろ》から歩いて来る友達が誰《たれ》だということは、見返らないでも分かると云った。純一は五官を以てせずして、背後《はいご》に受ける視線を感ずるのが、不愉快でならなかった。
 幕が開《あ》いた。覿面《てきめん》に死と相見ているものは、姑息《こそく》に安んずることを好まない。老いたる処女エルラは、老いたる夫人の階下の部屋へ、檻の獣《けもの》を連れて来る。鷸蚌《いっぽう》ならぬ三人に争われる、獲《え》ものの青年エルハルトは、夫人に呼び戻されて、この場へ帰る。母にも従わない。父にも従わない。情誼《じょうぎ》の縄で縛ろうとするおばにも従わない。「わたくしは生きようと思います」と云う、猛烈な叫声を、今日の大向うを占めている、数多《あまた》の学生連に喝采《かっさい》せられながら、萎《しお》れる前に、吸い取られる限《かぎり》の日光を吸い取ろうとしている花のようなヴィル
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