に体のしんに食い込まれているエルラが、燭《しょく》を秉《と》って老いたる恋人の檻に這入って来る。妻になったという優勝の地位の象徴ででもあるように、大きい巾《きれ》を頭に巻き附けた夫人グンヒルドが、扉の外で立聞をして、恐ろしい幻のように、現れて又消える。爪牙《そうが》の鈍った狼のたゆたうのを、大きい愛の力で励まして、エルラはその幻の洞窟《どうくつ》たる階下の室に連れて行《ゆ》こうとすると、幕が下りる。
又見物の席が明るくなる。ざわざわと、風が林をゆするように、人の話声が聞えて来る。純一は又奥さんの目が自分の方に向いたのを知覚した。
「これからどうなりますの」
「こん度は又二階の下です。もうこん度で、あらかた解決が附いてしまいます」
奥さんに詞を掛けられてから後《のち》は、純一は左手の令嬢二人に、鋭い観察の対象にせられたように感ずる。令嬢が自分の視野に映じている間は、その令嬢は余所《よそ》を見ているが、正面を向くか、又は少しでも右の方へ向くと、令嬢の視線が矢のように飛んで来て、自分の項《うなじ》に中《あた》るのを感ずる。見ていない所の見える、不愉快な感じである。Y県にいた時の、中学の理
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