、存外可笑しかないことね」と菫色が云った。
「ええ。可笑しかなくってよ。とにかく、変っていて面白いわね」と縹色が答えた。
 右の奥さんは、幕になるとすぐ立ったが、間もなく襟巻とコオトなしになって戻って来た。空気が暖《あたたか》になって来たからであろう。鶉縮緬《うずらちりめん》の上着に羽織、金春式唐織《こんぱるしきからおり》の丸帯であるが、純一は只黒ずんだ、立派な羽織を着ていると思って見たのである。それから膝《ひざ》の上に組み合せている指に、殆ど一本一本|指環《ゆびわ》が光っているのに気が着いた。
 奥さんの目は又純一の顔に注がれた。
「あなたは脚本を読んでいらっしゃるのでしょう。次の幕はどんな処でございますの」
 落ち着いた、はっきりした声である。そしてなんとなく金石《きんせき》の響を帯びているように感ぜられる。しかし純一には、声よりは目の閃きが強い印象を与えた。横着らしい笑《えみ》が目の底に潜んでいて、口で言っている詞《ことば》とは、まるで別な表情をしているようである。そう思うと同時に、左の令嬢二人が一斉に自分の方を見たのが分かった。
「こん度の脚本は読みませんが、フランス訳で読んだ
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