止《や》む。舞台では、これまでの日本の芝居で見物の同情を惹《ひ》きそうな理窟《りくつ》を言う、エゴイスチックなボルクマン夫人が、倅《せがれ》の来るのを待っている処へ、倅ではなくて、若かった昔の恋の競争者で、情に脆《もろ》い、じたらくなような事を言う、アルトリュスチックな妹エルラが来て、長い長い対話が始まる。それを聞いているうちに、筋の立った理窟を言う夫人の、強そうで弱みのあるのが、次第に同情を失って、いくじのなさそうな事を言う妹の、弱そうで底力のあるのに、自然と同情が集まって来る。見物は少し勝手が違うのに気が附く。対話には退屈しながら、期待の情に制せられて、息を屏《つ》めて聞いているのである。ちと大き過ぎた二階の足音が、破産した銀行頭取だと分かる所で、こんな影を画くような手段に馴れない見物が、始めて新しい刺戟を受ける。息子の情婦のヴィルトン夫人が出る。息子が出る。感情が次第に激して来る。皆引っ込んだ跡に、ボルクマン夫人が残って、床の上に身を転がして煩悶《はんもん》するところで幕になった。
 見物の席がぱっと明るくなった。
「ボルクマン夫人の転がるのが、さぞ可笑《おか》しかろうと思ったが
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