の片割れとも知れない金屑《かなくず》や木の切れがある。純一は小さい時、終日その中に這入って、何を捜すとなしにそのがらくたを掻き交ぜていたことがある。亡くなった母が食事の時、純一がいないというので、捜してその蔵まで来て、驚きの目を※[#「※」は「目+爭」、第3水準1−88−85、172−12]《みは》ったことを覚えている。
この古道具屋を覗くのは、あの時の心持の名残である。一種の探検である。※[#「※」は「金+肅」、第3水準1−93−39、172−13]《さ》びた鉄瓶、焼き接ぎの痕《あと》のある皿なんぞが、それぞれの生涯のruine《ルユイイヌ》を語る。
きょう通って見ても、周囲の影響を受けずにいるのは、この店のみである。
純一が古道具屋を覗くのを見て、大村が云った。「君はいろんな物に趣味を有していると見えるね」
「そうじゃないのです。あんまり妙な物が並んでいるので、見て通るのが癖になってしまいました」
「頭の中があの店のようになっている人もあるね」
二人はたわいもない事を言って、山岡鉄舟の建てた全生庵《ぜんしょうあん》の鐘楼《しゅろう》の前を下りて行《ゆ》く。
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