下宿を出て、団子坂の通へ曲った。
門《かど》ごとに立てた竹に松の枝を結び添えて、横に一筋の注連縄《しめなわ》が引いてある。酒屋や青物屋の賑《にぎ》やかな店に交って、商売柄でか、綺麗《きれい》に障子を張った表具屋の、ひっそりした家もある。どれを見ても、年の改まる用意に、幾らかの潤飾を加えて、店に立ち働いている人さえ、常に無い活気を帯びている。
この町の北側に、間口の狭い古道具屋が一軒ある。谷中は寺の多い処だからでもあろうか、朱漆《しゅうるし》の所々に残っている木魚《もくぎょ》や、胡粉《ごふん》の剥《は》げた木像が、古金《ふるかね》と数《かず》の揃《そろ》わない茶碗小皿との間に並べてある。天井からは鰐口《わにぐち》や磬《けい》が枯れた釣荵《つりしのぶ》と一しょに下がっている。
純一はいつも通る度に、ちょいとこの店を覗いて過ぎる。掘り出し物をしようとして、骨董店《こっとうてん》の前に足を留める、老人の心持と違うことは云うまでもない。純一の覗くのは、或る一種の好奇心である。国の土蔵の一つに、がらくた道具ばかり這入《はい》っているのがある。何に使ったものか、見慣れない器、闕《か》け損じて何
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