しょう」
「どうだかねえ」
 二人は又顔を見合わせて笑った。
 純一の笑う顔を見る度に、なんと云う可哀い目附きをする男だろうと、大村は思う。それと同時に、この時ふと同性の愛ということが頭に浮んだ。人の心には底の知れない暗黒の堺《さかい》がある。不断一段自分より上のものにばかり交るのを喜んでいる自分が、ふいとこの青年に逢ってから、余所《よそ》の交《まじわり》を疎んじて、ここへばかり来る。不断講釈めいた談話を尤《もっと》も嫌って、そう云う談話の聞き手を求めることは屑《いさぎよし》としない自分が、この青年の為めには饒舌《じょうぜつ》して忌むことを知らない。自分はhomosexuel《オモセクシュエル》ではない積りだが、尋常の人間にも、心のどこかにそんな萌芽《ほうが》が潜んでいるのではあるまいかということが、一寸《ちょっと》頭に浮んだ。
 暫《しばら》くして大村は突然立ち上がった。「ああ。もう行《い》こう。君はこれから何をするのだ」
「なんにも当てがないのです。とにかくそこいらまで送って行《い》きましょう」
 午後二時にはまだなっていなかった。大学の制服を着ている大村と一しょに、純一は初音町の
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