#一つ目の「e」は「`」付き]《セエヌ》が改まった。場所の変化も夢では自由である。純一は水が踵《かかと》に迫って来るのを感ずると共に、傍《そば》に立っている大きな木に攀《よ》じ登った。何の木か純一には分からないが広い緑色の葉の茂った木である。登り登って、扉のように開いている枝に手が届いた。身をその枝の上に撥《は》ね上げて見ると、同じ枝の上に、自分より先きに避難している人がある。所々に白い反射のある緑の葉に埋《うず》もれて、長い髪も乱れ、袂も裾も乱れた女がいるのである。
黄いろい水がもう一面に漲《みなぎ》って来た。その中に、この一本の木が離れ小島のように抜き出《い》でている。滅びた世界に、新《あらた》に生れて来たAdam《アダム》とEva《エヴァ》とのように梢《こずえ》を掴む片手に身を支えながら、二人は遠慮なく近寄った。
純一は相触れんとするまでに迫まり近づいた、知らぬ女の顔の、忽ちおちゃらになったのを、少しも不思議とは思わない。馴馴しい表情と切れ切れの詞《ことば》とが交わされるうちに、女はいつか坂井の奥さんになっている。純一が危《あやう》い体を支えていようとする努力と、僅かに二人の
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