間に存している距離を縮めようと思う慾望とに悩まされているうちに、女の顔はいつかお雪さんになっている。
 純一がはっと思って、半醒覚《はんせいかく》の状態に復《かえ》ったのはこの一刹那《いっせつな》の事であった。誰《たれ》やらの書いたものに、人は夢の中ではどんな禽獣《きんじゅう》のような行いをも敢《あえ》てして恬然《てんぜん》としているもので、それは道徳という約束の世間にまだ生じていない太古に復るAtavisme《アタヴィスム》だと云うことがあった。これは随分思い切った推理である。しかしその是非はとにかく措《お》いて、純一はそんなAtavisme《アタヴィスム》には陥らなかった。或は夢が醒め際になっていて、醒めた意識の幾分が働いていたのかも知れない。
 半醒覚の純一が体には慾望の火が燃えていた。そして踏み脱いでいた布団を、又|領元《えりもと》まで引き寄せて、腮《あご》を埋《うず》めるようにして、又寐入る刹那には、朧《おぼろ》げな意識の上に、見果てぬ夢の名残を惜む情が漂っていた。しかしそれからは、短い深い眠《ねむり》に入《い》ったらしい。
 純一が写象は、人間の思量の無碍《むげ》の速度を以
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